コンピテンシーと成果との因果関係?その2

 確かにコンピテンシーの学習には、「経験による学習」「モデリングによる学習」「概念化による学習」が必要であり、そのうちもっとも重要なのは「概念化による学習」であることにも異論はない。別の角度から見ると、「概念化による学習」とは「経験による学習」と「モデリングによる学習」の相乗積であると見ることもできるような気がする。
 というのは、概念化するというのは、何らかの学習結果からある法則性や共通性を見出し、これを自分なりに体系化して整理することである。具体的には、経験や学習から得られたことをベースに、一つの仮説を立てて理論づけをして、この理論の妥当性を検証するといサイクルを回すことで、徐々に研ぎ澄まされた概念が確立していく。
 昨今何かと話題になっている、形式知、暗黙知などの議論もこうした概念化の有用性に着目したものであると考えられる。ただ、この場合は、IT化を活用することで、「経験による学習」と「モデリングによる学習」に費やす時間を大幅に節約しようと目論んでいるところに多少無理があると言えるかもしれない。
 つまり、この方法では本来臨場感によって獲得されるべき経験部分を既定の知識として、システムの中に取り込んでしまうため、試行錯誤を繰り返すというもっとも重要な過程が希薄になってしまう。その結果、どうしても形式的でお仕着せの理論が出来上がってしまう。いわゆる生みの苦しみが軽減された分だけ中身も軽くなることが懸念される。
 少し論旨ははずれるが、公的機関が実施している「創業塾」あるいはこれに類する事業などをみると、事業に失敗しないようにという親心から、各種のセミナーや勉強会を主催しているものと思われるが、これはあくまでペーパードライバーを要請するもので、実際の事業経営にそのまま使える理論にはなりえない。
 実際セミナー終了後の追跡調査でも、創業に踏み切りしかも事業を軌道に乗せることができたのは極少数であるあることは、この事実を如実に物語っているのではないだろうか。何事によらず、情報や知識を得ることはそれ自体価値あることであるが、体験を通して検証するといプロセスはどうしても省略することはできない。