堅固な組織力が中小小売業の生き残りのカギ

 顧客の課題解決が小売業の志向すべき顧客マーケティングであり、その究極の手法がワンツーワン・マーケティングである。そして、その中身は「顧客を知る競争」と位置づけて議論を展開してきたが、翻って考えてみると、このやり方は日本の伝統的な業態である魚屋や大工などとよく似ていることに気づかされる。
 しかし、現在これらの業者や職人はことごとく衰退しているところをみると、全てが同じではないこともまた認めざるを得ない。その違いは、「顧客を知っていること」と「顧客を知る競争」にあるのではないだろうか。つまり、前者は顧客との関係を最適のものと固定的に捉え、これを守ることが一大課題であった。
 一方、現代小売業が対象としている顧客は、膨大な情報量をもとに日々進化し、そのニーズも俗人的あるいは俗職的なものでくくることは不可能になってきている。すなわち、この進化に柔軟に対応することがワンツーワン・マーケティングの目指すところなのであるが、顧客との関係強化という形は共通している面も多い。
 例えば、魚が欲しければ魚屋で買い、野菜は八百屋で買うことに何等不便を感じていなかった消費者が、これを一緒に販売している店があることを知れば、当然その店の方が便利であることを学習するであろう。こうして鮮度の高い情報を手に入れた消費者に対して、昔のよしみだけで自店の顧客として繋ぎとめておくのは難しい。
 こうしてワンストップ・サービスなる言葉が生まれ、GMSなどの業態が生まれたわけであるが、消費者の欲求の進化は止まるところを知らず、総合性と専門性のメリットを使い分けるという高度なテクニックを手に入れた。そうなると、どのような括りで消費者のニーズを特定するかという競争の原点に戻ってしまった。
 店舗の中核的機能は、品揃え、価格が二大要素であることは今も昔も変わりはない。この「品揃え」や「価格」は、見方を変えれば、サービスであると見ることができる。つまり、消費者に代わって商品を仕入れ、そのサービス料を原価に上乗せして販売していると考えれば、コンパクトで強固な組織により付加価値の高いサービスがカギとなる。