日々進化する顧客満足?その1

 顧客課題の解決を目指すための手法として、ワンツーワン・マーケティングが脚光を浴びているのは事実であるとしても、肝心の消費者がどのような課題を持ち、企業がワンツーワン・マーケティングを実践することで顧客満足を達成したかは、顧客個々人の評価によるだけに客観的に測定することは難しいものと思われる。
 しかし、その満足度は長期的に見れば、必ず将来の販売額やロイヤリティに反映すると考えられる。であるからこそ、ワンツーワン・マーケティングが推奨されるということに回帰することになるわけであるが、企業の独自能力やキャパシティからいっても、全ての異質性に応える機能を備えていることはありえない。
 すなわち、ワンツーワン・マーケティングといえども、導入初期においては、ごく大雑把な情報に基づいた仮説に過ぎないのであるから、場合によっては、顧客との間に決定的な溝が生じてしまうこともあるかもしれない。サービス業ほどではないにしても、何らかの形でサービスを伴う以上、お互いの相性を確かめることも機能のうちである。
 カスタマー・ソリューションを狙うのであれば、まず、この中身を紐解いて見ることが仮説の設定に役立つのではないだろうか。つまり、消費者が抱いている共通の満足とは何かをまず確実につかまえ、然る後に自社の独自能力と突き合わせてみるというのが、効率的でもあり、かつ効果的であると思われるからである。
 顧客満足も時代とともに進化するので、必ずしも一元的にかつ固定的に定義づけるのは難しいが、各種のアンケート調査の結果などから、かなり、消費者の心理が明らかにされてきている。その一つが、「ホスピタリティ」と呼ばれるもので、一言で言えば親切ということなのだが、これが少々ややっこしい面がある。
 「小さな親切、大きなお世話」というフレーズがかつてあったが、まさに親切とは難しいもので、「売らんかな」という姿勢があった場合(少なくとも顧客がそう感じた時)は、どんなに親切であっても、大きなお世話なのである。先に述べた「自己解決」がそれで、「他者解決」を望んだときにその限度で親切心を発揮して欲しいのである。
 こうして考えてみると、「ホスピタリティ」とは単なる親切ではないことに改めて気づかされるが、人によっても、TPOによっても異なることを思えば、ワンツーワン・マーケティングでは、なかなか突破口を見出すのは困難が伴いそうだ。つまり、顧客の虫の居所によっては、「これ以上ないと思った親切」さえ、「大きなお世話」になる可能性もある。