多様なワンツーワン・マーケティング

 ワンツーワン・マーケティングは、「顧客を知る競争」において最適なマーケティング手法だと述べたが、これも発展段階において幾つかに区分されているようである。例えば、店舗を介さず、売り手がカタログやテレビ、ウエブなどを通じて直接顧客に販売するテレビショッピング、eコマースなどのダイレクトマーケティングもこれに当たる。
 ダイレクトマーケティングをさらに発展させた形のインタラクティブマーケティングでは、インターネット、電話、ファックスなどによる顧客との受発信を通じ、顧客との対話(双方向のコミュニケーション)を確立するという手法をとる。また、これに類するものとして、バーミッション・マーケティングやバイラルマーケティングなどが上げられる。
 いずれの手法も、最終的に目指すのはインタラクティブ・メディアを創造することにあるとすれば、データベースの活用が不可欠な条件となる。顧客一人ひとりと対話できるようにするためには、顧客の基本属性や購買履歴、購買後の感想、意見、購買理由などに関するデータを収納したデータベースを充実させなければならない。
 データベースは、顧客の購買行動を分析して、ダイレクトメールによるプロモーションを行うときの参考にしたり、その結果をさらにデータベース化するといった使い方をすることで、顧客の深層心理に迫るためのものである。しかし、現実には、ダイレクトメールの住所録としてしか活用されていない場合も多く見られる。
 データウェアハウスやデータマイニングの登場により、大量のデータを処理・分析するツールは簡単に入手できたとしても、作業時間の60%はデータの入力や整理に費やされることもあることと、分析に習熟していなければ、ソフトを十分に活用できないなどの理由で、本格的な活用には至っていないのが現状ではないだろうか。
 ワンツーワン・マーケティングの目指すところは、「顧客課題の解決」である。その基本が顧客との受発信にあるとすれば、まず手法ありきという姿勢ではなく、顧客を知るためにはどのような情報を効率的に集めるべきかというグランドデザインをまず構築しなければならない。インタラクティブ・メディアの創造の意義はそこにあるはずだ。