消費者が求める問題解決策?その3

 顧客が「他者解決」を望むのは、一見我侭に見えることもあるかもしれないが、問題解決を求めて来店するわけであるのだから、これを達成することに関する手段は複合的なものであり、これが不足しているため自己完結できないと感じることがあれば、他者(店員)の手助けを借りたいと思うのはむしろ当然のことなのである。
 しかし、現実には今日に至るまで、そうしたサービスが実施されていなかったため、改めてサービスのありがたさが感じられたということになるのではないか。すなわち、当然のサービスとして、顧客も店員も認知していたのであれば、特別感謝されるという場面もなかっただろうし、もし欠けていれば大変な非難を浴びたであろう。
 役務を提供することが業であるサービス業は別として、商品の販売に付帯するサービスは、物品の無償提供や値引き販売(割引)などが主なもので、人的サービスは店員の資質に依存するところが多かったのは事実であるが、潜在的欲求が顕在化された今日、問題解決手段の一部として位置づける動きが活発化している。
 この「他者解決」にのっとったサービス精神を現場の店員や販売員に強く持ってもらうためには、「権限を委任すること」だとする説がある。確かにサービスにまつわる伝説の多くは、従業員個人の判断力やサービスに対する姿勢などによるところが大きいが、単に権限を委任しただけでは、裁量権を活用するまでには至らないように思われる。
 デレゲーションという言葉で説明されているこの考え方は、人事管理で言うところの職務拡大や職務充実とも通じるところがあるようだが、基本はやはり経営理念である。すなわち、当社は物品販売業であるというスタンスなのか、それとも問題解決産業であると自社を定義づけているのかによって異なるのではないだろうか。
 前述の伊勢丹の例にしても、成功の要因はルールを改めたことにあるのではなく、経営姿勢をあるべき姿に引き戻したことが顧客の共感を呼び、それがフアン層の拡大に繋がったものと思われる。「自己解決」と「他者解決」をサポートする仕組みを独自能力によっていかにつくり上げるかが、中小小売業の大きな課題になっている。