消費者が求める問題解決策?その2

 前述のセレクトショップ方式と目指すところは同じでも、提供する手段がまったく異なるのが「ワゴン」方式と呼ばれものである。これは従来のワゴンセールと形態は似ているが、拠って立つコンセプトはまったく異なるもので、ショップに鮮度と変化を与える重要な役割をになうもとして注目を集めている方式である。
 この方式導入のヒントとなったのは、阪神淡路大震災被害者のオーナーが1ヶ所に集まって1坪ショップを開業した神戸の商業施設「ハーバーサーカス」の発想であったという。次に何が出てくるかというワクワク感と、フリーマーケット感が人気の秘密だそうだ。つまり、顧客が自由に選べる「自己解決」欲求にかなっているということである。
 人間の心理は複雑なものである。一方では誰にも邪魔されず、自分流で気ままな生き方をしたいという願望を持ちながら、他方では、人の心の温かさを待ち望んでいるという心理は、まさに複雑としか表現しようがない。こうした複雑な心理にどこまで迫れるかがこれからの小売業の腕の見せ所となることは間違いない。
 「放っておいてもらいたい、しかし、必要なときには、心を込めて手伝いをして欲しい」こうした心情を我侭と考えて、深追いすることを拒絶するか、こういうシーンに出会ったときこそ、個客との絆を深めるチャンスと捉えるかによって、企業として存続できるかどうかが決まる。つまり、ソリューションビジネスと認識できるかどうかにかかっている。
 セレクトショップ方式やワゴン方式が、「自己解決」志向に適応しようとする取り組みなら、他人の手助けを望むのは、「他者解決」と表現できるであろう。伊勢丹の「お買い場革命」の成功の要因は、「顧客をトイレや目的の売場まで案内する」ことであったという。言われてみればもっともなことなのになかなか踏み切れない。
 こうしたサービスは、マニュアル化されたものであったとしても、ある程度の顧客満足には繋がるであろうが、サービスの実行者である店員(従業員)が、これを中核業務であると認識しているかどうかによって、顧客の受け取り方が微妙に異なる。つまり、心がこもっていなければ、顧客は店員に迷惑をかけたと感じてしまうかもしれない。