現代小売業が成り立つための拠り所

 マーケティング・マネジメント戦略の中心課題が、4P(製品、価格、場所、プロモーション)であることには異存はない。しかし、この戦略はあくまで確立された市場(顧客ニーズの塊)を前提にした戦略であるから、現在のように顧客ニーズの束を特定するという過程を経ないで、いきなり4Pを論ずるのは飛躍し過ぎである。
 市場分析の視点は、自社の独自能力をモニターしながら、因数分解の考え方で挑むべきだと以前に指摘したが、かつてのマスマーケット時代には、品質や価格、供給ルート、適正な販売促進策などで売上高のランクが決定される構造になっていたため、4Pという限られた要素の質量によって企業の序列がほぼ決まっていた。
 しかし、消費者ないし生活者は一度大量の情報を手に入れると、自分らしさを犠牲にしてまで同一の市場にしがみついている必要がないことに気づいてしまったのである。そうなると、小ロットでも自分らしさを実感できる小さな世界を探し始め、客観的で表面的な品質や安さには、以前ほど興味を示さなくなってくる。
 市場は大きな見方をすれば、人口×総需要と見ることができるから、全体のキャパシティは不変であっても、生活シーンの組み合わせによって無限のオプションが出来上がってしまう。企業も当然こうした変化を察知し、これをどのように括れば消費者の支持が得られるかに挑戦し始まっている。そのひとつの現象がカテゴリーマネジメントである。
 だが、消費者自身も気がついていない「気まぐれな自分」をどうやってつかまえようとしているのか、仮につかまえたとしても長く繋ぎとめておくことができるか、といった疑問を拭い去ることはできない。いずれにして、熾烈な戦いが幕を開けてしまった以上、雌雄を決するまで戦い続ける以外に道はなさそうである。
 こうした社会環境の中で、中小小売店も同じラウンドて戦いを挑むとすれば、それはまさしく自殺行為に等しいといわざるを得ない。市場の異質性と不安定性の相乗積で捉えられる不確実性(市場)をどれだけ透明にするかが、中小小売店の腕の見せどころであり、自社の存立基盤を再構築するための最重要課題である。