マーケティングの原点は、顧客ニーズに応えるために最も合理的な機能を模索することにあった。この考え方の基本は今も色あせることはないが、従来型のマーケティングは、一定の顧客(ニーズ)が一塊になって層をなし、必要なもの、欲しいものをアピールしていたため、この欲求を満たすことが大きな使命であった。
例えば、食べること、眠ること、遊ぶことといった誰にでも共通するニーズの束が一つの市場であったため、これに応えるための商品を見繕ってセグメントし、提供することがマーケティングの中核的機能であった。当然そこには満たされないニーズも存在していたはずであるが、消費者の情報力不足もあり、あまり強く自己主張することはなかった。
しかし、ライフスタイルが洋風化し始めたのをきっかけに、消費者は単なる消費を貪る存在ではなく、生活者としての自覚と主張を明確にしだしたのである。こうした動きは、欧米においても言えることで、情報の流通性がたかまるにつれ、一気に多様化の動きが加速し始めたため、従来の市場セグメントでは市場を定義できなくなってしまった。
「顧客が主人公」であるというスタンスは変わらないとしても、顧客ニーズの塊が流動的で捉えにくくなり、マーケティング機能の中核は、強力なコンセプトによってセグメントされた市場を定義づけることにシフトしたのである。つまり、自社の独自能力自体が相対的なものとなり、誰がそれを求めているかは企業の責任で見つけなければならない。
例えば、町外れの工場の近くにあった酒販店などでは、仕事帰りに一杯やるために立ち寄るのが楽しみであるという工員向けに、品揃えや提供方法を工夫することで生計を立ててきた。しかし、こうした共通のニーズは、最早市場としてのセグメントにはなりえなくなってしまい、全く別の切り口で市場を定義し直さなければならなくなっている。
こうした環境変化の中では、顧客のニーズと自社の独自能力の相性を考えながら、最適な経済セグメントを自社の責任において捜し出さなければならない。すなわち、「顧客を知ること」が何よりも大事なアクションになっているわけで、まず業種や業態ありきという姿勢から抜け出さなければ、マーケティングを理解しているとは評しがたい。
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