これからのマーケティング戦略

 ここで話題にするマーケティングは、消費財メーカーの全体戦略とは少し異なった視点からのマーケティングである。当然、小売業のマーケティングという考え方では、マーチャンダイジングということになるのだろうが、現代経営においては、メーカーとか流通業を別立てにしてマーケティングを論じることはあまり意味がない。
 従来のマーケティングは定義的にいっても、「個人と組織の目標を満足させる交換を創造するために、アイディア、財、サービスの概念領域、価格、プロモーション、流通を計画実施する過程」となっており、特定のマーケティング課題を解決するために、マーケティング機能の最適ミックスを開発し、実施することに勢力が向けられていた。
 しかし、これからのマーケティングは、顧客の創造、顧客中心主義、顧客満足の追及が中心課題である。つまり、これまでのように顧客が常に存在しているという前提に立つのではなく、真の顧客価値を創造することで新たに市場を編成するために、顧客をパートナーとして位置づける必要性が高まってきている。
 こうした現象を加速させているのは、他ならぬIT化であるしても、これまで非対称でブラインドになっていた情報を一度入手できるようになると、消費者は単に川上から供給される商品を一方的に受入れるだけの態度に疑問をもち始めたのである。かくして、商品を販売するために便利な仕組み自体が再編成を迫られることになったのである。
 市場の創造とはそうした意味で、決して誇張したものではないことを理解しなければならない。すなわち、これまでは、人の集団として厳然と存在していた市場とおぼしき塊は、音を立てて崩れ始め、個々人の消費者は自分の世界に戻り始めたのである。つまり、どんなに優れた商品でも、従来人の集まっていた市場に誰もいなくなったというわけである。
 そうだとすれば、消費者に呼びかけて自社の得意とする技を受入れてもらう市場を共同で創造するしかない。これがいわゆる顧客の創造であるから、「マーケティング」と「イノベーション」がなければ、企業の存在すらありえないということになる。これが現代マーケティング志向が根幹に据えられていなければならない理由である。