パラダイムという言葉は、科学者であるトーマス・クーンが、その著書「科学革命の構造」の中で示した概念で、一般的には、「その時代や集団を支配している枠組み、価値観」という意味で使われている。この定義に従えば、「パラダイム・シフト」とは、価値観を軸とした全体の枠組みが変化したことを意味するわけである。
これを小売業のバージョンで表現すれば、工業化社会から高度情報化社会、サービス化社会へとパラダイム・シフトしていることを認識した上で、小売業の変革を促すマーケット・パラダイムを理解しなければならないといことになるであろう。それにはまず、生活者の生活圏の変化を知ることが基本中の基本である。
工業化社会を象徴する現象と言えば、大量生産によって全ての消費者に同じ商品を提供し、大量消費を促す時代であった。こうした生産者主導型の社会的枠組みが揺らぎ始めるきっかけとなったのが、ITに象徴される情報化社会である。ここではこれまでブラインドになっていた情報が、大量にしかもリアルタイムで入手できるようになった。
こうなると、メーカーが造ったモノ、流通業者が仕入して提供するモノをワンサイドで受入れていた行動パターンが一変し、モノを所有することに対する価値観から、その商品がもたらす使用価値ないしサービスに真の価値を求めるようになってきた。情報化社会では、こうした心の欲求に基づき、知りたい情報をリアルタイムで入手できるようになった。
顧客は商品やサービスに関する情報をあっという間に入手できるようになると、比較購買手段がこれまでとは比べものにならないくらい多くなってきたため、工業社会の主役であったメーカーの優位性は覆されてしまい、今や顧客がマーケットの主導権を握ってしまった。これがいわゆる流通業にも革命的変化を促したパラダイム・シフトである。
サービス化社会では、顧客が主人公でることを否応なく認めなければならない。サービスとは、ラテン語のセルヴィタスという言葉を語源とするものだそうで、「奴隷の身分、奉公、奴役」ということである。つまり、顧客が主人公、顧客が王様という精神に徹することによって、顧客から選んでもらえるという意味である。
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