中小企業の問題発生メカニズムの検証?その5

 自社のあるべき姿を十分に認識している企業は、分析ソフトを導入するにしても何が必要かを熟知しているため、まず納得のいく分析方法を設計することから始めているようだ。前述の食品製造業の場合は、この点に欠けていたため問題解決のために必要な情報をいきなりソフトに求めてしまったので、お仕着せの分析処理体制ができてしまった。
 この企業とは業種はことなるものの、全く正反対のスタイルを貫きながら好業績を上げている企業もある。この企業では、情報収集と分析はもっぱら紙と鉛筆、計算器のみであるが、経営者は分析以前に何が当社のあるべき姿か、そしてこれを維持発展させる上で必要な情報は何かを徹底して追及している。
 もちろん、足りない力は専門業者の知恵をかりてはいるものの、観測スタイルはほぼ万全に近い状態にある。その後分析ソフトを導入することになったが、システムの設計には現役の分析担当者が主導して行ったため、市場環境の変化にも柔軟に対応できる優れたシステムに仕上がっており、本来の威力を十分に発揮している。
 この2つの企業の間にはそれ程大きな違いがないように見える。つまり、両方の経営者は極めて真面目で前向きであり、情報の収集・加工の重要性については十分に認識しているといった様子が窺われることから、少なくとも表面的には殆ど変わりがないように写るのだが、情報に対する認識に大きな違いがあったのである。
 一方の経営者はあるべき姿とは、経営資本の回収と増幅におき、これを達成することを経営目的と位置づけているため、経営の現状を厳しく監視することを管理者の職務として位置づけている。したがって、経営者も管理者もあるべき姿との乖離が生じると、徹底して現状を分析するという行動規範が確立されていたのである。
 他方分析ソフトに依存している企業では、分析ソフトがあるべき姿を教えてくれ、同時に是正措置まで提案してくれることを期待していたのである。つまり、情報が大切だということは認識していても、その情報が経営上の意思決定にどの程度重要であるかは、経営理念の中にはなく、分析ソフトに任せていたということである。