サービスの品質を高めるための切り札?1

 このシリーズでは、サービスの品質を高めることで、付加価値生産性を向上させる方策を模索することをテーマとして議論を展開してきた。その過程で経営環境の不確実性にも言及したわけであるが、製造業の付加価値生産性は比較的高いのに、非製造業は何故低いのかという疑問を解く鍵はついに見つけることはできなかった。
 また、データを子細に分析すると、製造業の中でもかなりマダラ模様になっていることも含めて考えると、十把一絡げにIT化の遅れだけでは説明がつかない部分あり、ここまでの議論は入り口に過ぎないという思いを払拭できない。例えば、欧米で言うところのサービスと日本の「おもてなしの心」とではかなりサービスの定義が異なる。
 日本では、本業に付帯するサービスとして対価を伴わないものを欧米では、対価の対象となるサービス(付加価値)としてカウントするため、サービスの品質は高いのに付加価値生産性は低いというデータになって表れる。もちろん、日本企業の生産性の低さを全て説明できる根拠とはなり得ないことは十分承知しているつもりである。
 しかし、かつては労働のダンピングなどと称して、このことを過剰サービスとして非難した時代もあったことも事実である。近年指摘されているような付加価値生産性の低下は、こうした指摘に対して是正策をとったことによる生産性の向上と、これによるサービス(役務)コストの増加を拒絶した企業とのぶつかり合いの中で生じている。
 具体的にいうと、労働時間の短縮による相対的な人件費の高騰、これによる付加価値の増大と労働分配率の上昇を比較して、IT化などによる技術革新を積極的に取り入れた企業あるいは業種は、付加価値生産性が飛躍的に上昇したが、こうした対応が馴染まない企業もしくは乗り遅れた企業は相対的に低レベルに甘んじている。
 つまり、付加価値生産性を高めるには、ITの活用を抜きにしては語れないとしても、これまでのように導入をただがむしゃらに進めればよいということでなく、企業や業種の特徴に合わせて、システムを創り上げるのでなければ、目標を達成することはできない。このプロジェクトに参加できる人材に育つことがやはり原点にあるような気がする。