アウトソーシングの実践

 これまで主題にしてきたのは製造部門のアウトソーシングであったが、実際の企業現場では管理部門などのアウトソーシングもかなり進展してきている。しかし、必ずしも成功していると評価できるものばかりではなく、中には社内の人材が活躍できる場がなくなってしまったり、定年退職者の再雇用の場がなくなるといった現象もおきている。
 こうした現象は、委託企業側に問題があるのか、それとも受託企業の方に原因があるのかは判別つけがたいが、アウトソーサー(委託先企業)選定の段階に問題があると思われることが多いようである。そこでまず、自社の管理部門の現状をチェックするポイントについて考えてみたい。例えば、管理部門への資金投入状況を調べるなどである。
 つまり、人材の棚卸をしてみるわけである。それはちょうど製造業の工程分析をする場合の手法そのもので、資金と人材の投入量からしてどの程度の生産性寄与が実現できているかどうかを調べるのである。大抵の場合は、間接部門であるがゆえに測定不可能であるというコメントが帰ってくると思われるが、そうした抵抗にめげないことが大切である。
 必要かどうかやどの程度役立っているかが曖昧であるとすれば、そのポジションを別の人材で代替してみるのも効果的な方法であるが、その場合はさらに抵抗があり、中堅の管理職からは特に敬遠されることが懸念される。しかし、そうした抵抗の強さはそのまま、本人が抱いている危機感の現れと見ることができる。
 こうして人材の棚卸が終了した時点で、アウトソーシングする業務を委託する候補を選定することになるが、ここで重要なのは、委託する業務の範囲と内容、それに満足水準、これを確保するための費用額などについて見積書を提出させることをはしょってはならない。そればかりか、業務計画書も当然提出させなければならない。
 次に、これらの提出資料を分析し、アウトソーサーの実績から期待水準を把握する。これらの確認作業が済めば、委託契約を締結することになるが、ここで重要なことはもう一つ、あらゆるトラブルを想定して契約書を作成することである。ただし、トラブル防止を意識するあまり、委託先にとって著しく不利なものであってはならない。