コラボレーションの進展

 ファブレス経営の発展型として位置づけられるのがコーディネート型であるとすれば、同業種間あるいは異業種間で共同組織をつくり、明確な補完関係を構築するのがコラボレーションである。この形は、アウトソーシングの弱点とされるノウハウや技術の弱体化を防止する方策として考案されたといえるものである。
 それは単なるアウトソーシングとはやや異質のもので、複数の企業がお互いの経営資源を共有できる仕組みを作り、強力なパートナーとして新しい付加価値を生み出すという組織的活動である。逆に言えば、新しい付加価値に目をつけてはいたものの、なかなか単独ではカバーできなかった新たな機能を複数の企業の連携により実現を目指すものである。
 例えば、優れた製造技術を持ちながら、製品企画力が不足していたため、経営資源の稼働率が低く、業績が低迷しているといった企業の場合は、マーケティング力に優れた企業と共同組織を作ることで、お互いの企業に蓄積されたノウハウが活用されるといった場合である。産地産業の中小企業ではこうしたミスマッチは確かに多く存在している。
 これは同業種の場合に止まらず、異業種間についても言えることであるのだが、中小企業の場合は、防衛的でかつ懐疑的にならざるを得ないという体質が強いため、情報力という点で閉ざされていたためか、こうした形をとることはごく稀であり、一気にM&Aを選択してしまうというケースが多いように思われる。
 こうした傾向は、中小企業経営者の本質的姿勢ではないことは明らかだが、コアとなる独自能力がやや霞んで見えるという特徴も影響しているように思われる。つまり、情報の収集・分析力に自信がもてないため、軒を貸して母屋を取られることにならないか、という警戒心が常に働いているからで、これを消極的であると断ずるのは早計である。
 しばらく前のことであるが、経済産業省の肝入で異業種交流を奨励したことがあった。この交流会にカタライザーという名のコーディネーターを派遣し、企業間の連携を促したのであるが、お見合い時間が長すぎたためかそれ程の成果はなかったように思われる。これなどは正に情報収集合戦の場を提供したに過ぎなかったのである。