ファブレス経営の形

 ファブレス経営で最も成功している形は研究開発型企業である。この形は、自社は研究開発に特化して、生産は外部に委託するというもので、設備投資を極力抑えその分研究開発に専念することで委託先をリードする仕組みである。成功への鍵は、自社の優れた開発力と生産委託先とのパートナーシップにかかっている。
 これと似たタイプではあるが、ベンチャー企業が研究開発を担当し、大企業に生産を委託するというやや大胆とも思える提携関係である。大企業側としても、自社の操業度に余裕がある場合やOEMの可能性を模索するなど、メリットが大きいと判断される場合などに実現する戦略的な提携タイプのファブレス企業もある。
 また、研究開発よりもマーケティング力に優れた企業は、商品企画を主力に特化して設計、生産を外部に委託する形もある。この場合、外部委託は完成品とは限らず、ユニット発注することで各パーツをセッティングするといったものである。市場の変化を読み取る技術を武器にした連携のタイプで、大手商社などがこの形態に近い手法を用いてきた。
 更にこれらのタイプの発展型ともいうべきものがコーディネート型である。典型的な例が製造、販売、流通などの同盟関係であろう。当然このチャネルの中には強力なリーダーが存在し、参加企業間のネットワークを構築し、市場ニーズを的確に把握し、タイムリーな情報を提供することで、それぞれの持ち味を生かすというやり方である。
 これらの基本型をベースにしたオプションが出現するのは時間の問題であるが、なかなか懐疑的で先陣を切りたがらないのが中小企業である。しかし、成功事例を確認するまでもなく、こうしたファブレス経営は中小企業に最適なものであることを認識しなければ、パートナーを選定する好機を逃してしまうことにもなる。
 しかし、全く無防備でファブレス経営を志向するのは危険が伴う。中小企業の場合は、まず自社の経営資源を多角的に分析し、始めは緩やかな連携体制を構築することで、ファブレス経営の功罪を体感する慎重さも必要である。その場合の評価軸は、設備投資のメリットとデメリットを徹底してシュミレーションしてみることである。