ファブレス経営の拠って立つ基盤

 ファブレス経営といえば、自社では企画・設計だけを行い、製造設備を持たないで、コア・コンピタンス経営を徹底していること、核となる高度な技術を要する部分は自社でおこなっていること、自社と経営理念が共有できるパートナーが存在していること、などを特徴とし、総合的なマーケティング力を強化していく方針を打ち出していることである。
 その具体的メリットは、固定費を変動費化することで柔軟な経営ができること、これまで企業規模の格差などにより乗り越えることが不可能であった市場の参入障壁を克服できることなどであろう。一方デメリットは技術やノウハウなどが社外に流出する虞があること、過度に受託先に依存すると主導権が奪われてしまう危険があることなどである。
 こうしたメリットとデメリットが内在するファブレス経営であるがゆえに、成功例ばかりではなく失敗例も多く見られることは確かであるが、ここで見えてくるキーワードは、「チャネル内における自社の存在感」、「コアとなる機能の存在:例えば優れたマーケティング力」、「受託企業との対等な契約締結」などではないだろうか。
 もちろんその他にも留意しなければならない点は数多いであろう。しかし、これまでの成功例と失敗例を分析すると次ぎのようなキーワード浮かび上がってくる。すなわち、経営資源の補完という点では、申し分ない両者の位置関係が確認されたとしても、チャネル内における自社の存在感が乏しかったことで破談してしまった。
 ノウハウだけが吸い取らとられてしまったのである。訴訟に持ち込もうにも元々経営資源が脆弱であるため、泣き寝入りせざるを得なかったわけである。一方、販売力に優れていた企業と技術力の優れた企業同士の提携は、お互いの存在感を尊重しあうという基本的なスタンスを貫いたため、メリットを分け合うことが出来た。
 また、ファブレス経営を成功に導くためには、受託企業とのコミュニケーションが重要であることはもちろん、利害が対立する虞のある部分については、徹底して話し合い最終的には契約により、トラブルの防止を図ることが肝要である。中小企業ではこの点がややずさんで、一旦対立関係が生じると骨肉の争いになる危険性がある。