総合化と専門化の同時進行

 大手企業を中心にM&Aが活発に行われていることから、巨大企業でなければ国際的には生き残れないのではと不安を抱いている中小企業者は多いのではないだろうか。しかし、その一方では前述のようにアウトソーシングもあらゆる部門で進行しているという一見矛盾した傾向もみられるなど、かなり複雑な様相を呈しているように見える。
 こうした傾向は、国際競争力をつけるためという大義面文はあるものの、裏を返せば不確実性への防衛策でもあるわけであるから、中小企業はもう少し覚めた目で観察する姿勢が必要であると思われる。つまり、規模の経済を追求するのは当座の姿であり、確たる展望が開けているからとは思えないふしがあるということだ。
 これらの大企業は、従来までは限られた市場と法体系に守られた護送船団方式の市場展開一辺倒であったたが、IT化などの進展により顧客の情報力が堰を切って増大してきたことに虞をなしているとも見られる。これまで寡占型であった企業ほど離合集散を繰り返す動きが盛んであることは何よりの証拠である。
 もちろん、全てがそうした推測が当てはまるとは思えないが、少なくとも、中小企業までが浮き足立つ必要はないように思われる。日本の場合は大企業にとって重要なパートナーとしての役割があり、今後も形を変えて支え続けることになることは疑う余地はない。小さいものの全体で大きいものの全体を形成しているという構造は不変だからである。
 これまで寡占型の企業は季節とか景気といった、循環的でトレンドが捉えやすい変化に対応することが業容安定のための課題としてきた。特に装置型産業においてはその傾向が強く、まるで江戸時代の関所管理と同様の経営体制を長年に亘り守り通してきたため、環境変化によって変化する引数(変数)を有機的に管理するノウハウが育たなかった。
 そのためにコントロールしやすい一網打尽型の企業に対する執着が強いのであり、優れた独自能力に支えられている企業は、それ程規模の拡大を志向していないように思われる。ただし、好業績をあげている企業は敵対的買収に備えるための防衛策として、M&Aを検討する動きはあるものの、基本的には専門性をより強化している動きのほうが強い。