企業文化の生成

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 企業文化とは組織に対する経営者の価値観が大きくかかわっていると理解されているが、それはどのような過程で生成されるのだろうか。企業文化は経営理念が大きく作用するが、その経営理念は経営者の将来に対する思い入れ、信念・信条が込められているもので、企業家精神も含め組織メンバーの価値観に大きな影響を与える。
 組織は成長する過程で多くの成功を体験することで、不文律ではあるが一つの行動規範となり、価値観が生成されていくもので、いうなれば人々の共有できる思考様式とでも言うべきものである。したがって、この企業文化は企業の事業内容や取扱商品によって大きく異なるのは当然であり、また、企業の置かれている立場によっても左右される。
 更に、競争状態や顧客のタイプなどによっても組織のメンバーに影響を与えるし、経営システムの影響も受けるが、経営システムは企業独自のものであるだけに、そのシステムを遵守することがメンバーに求められるから、当然の結果として最適な行動規範を構築するインパクトが働く。こうしたプロセスで生成されるのが企業文化である。
 この自然に創成された行動規範は、集団の相互作用や日常業務の相互作用の中から生まれたものであるから、この行動規範から多くのことを学んだメンバーは、独自の世界観や企業感、人間観を持つようになり、更にグレードアップされた思考様式を生成する。このように複合的な要因が重層的に絡み合い醸成されていくのが企業文化である。
 このようにして生成された組織の価値観である企業文化は、メンバーに対して理念的な刺激を与え、生き甲斐、働き甲斐という動機づけとなり、経営理念に共鳴できるメンバーにとっては大きな心理的エネルギーの発揚に繋がる。この共通の価値観は、コミュニケーションを円滑にし、組織的意思決定のための判断基準にもなってくる。
 企業文化は、いわず語らずの中で、それなりの共通認識により、成果を上げることに大きな意義があるが、反面、一旦形成されると、過去の成功体験に縛られ、時代の変化を読み取るタイミングを見失い、経営革新の妨げになるという面もあるといわれる。いわゆる企業文化の逆機能と呼ばれる現象が顕在化することもある。