多様な価値基準によって選択される戦略

 経営戦略はかつてマーケティング戦略の上位概念として位置づけられていた時代があった。しかし、一定の市場環境の下で展開されることを前提にしたマーケティング戦略では、目まぐるしく変化する市場環境に対応することが不合理になり、経営戦略の全体最適化という機能を取り込んだ戦略的マーケティングという考え方が登場した。
 すなわち、上位概念である経営戦略では、成長戦略や競争戦略といった企業の経営目的を全体の戦略の組み合わせにより実現することを目指すものであるのに対して、マーケティング戦略は事業単位ごとに展開され、マーケティング目標と市場目標に落とし込まれた形で推進されるだけで、内容的には区別する必要は薄いように思われる。
 したがって、製品差別化戦略や市場細分化戦略、ニッチ戦略といった戦略の内容も区別して扱う必要は全くないので、個別の戦略については既に述べたマーケティング戦略に譲ることにして、ここではもっぱら企業の生存と成長に焦点を当てた、事業構造戦略につて深く掘り下げ、多角化の要因との関連性を探ってみたい。
 企業は市場の変化の上で生存している以上、競争戦略を避けることができたとしても、新しい競争環境がすぐに出現するので、永続的に独占的立場を保つことはできないし、また、ある程度の競争は市場ばかりではなく、自社の経営資源を陳腐化させないためにも有効に働くことが、歴史的にも証明されていることである。
 そうした市場競争の中にあるからこそ、市場の衰退や製品のライフサイクルによって、企業の経営資源の強弱が移り変わるのであるから、企業としては事業構造を絶えず市場向きに修正しておかなければ、陳腐化してしまうことになり、場合によっては命取りになることもあり得るし、特に技術革新への対応遅れは深刻である。
 こうした変化を経営に織り込むため、企業は余剰資源を多角化につぎ込むことになるのだが、この組み合わせがまずければかえって衰退を早めてしまうというジレンマもあり、軽々には多角化に踏み切れないという事情もあるため、衰退した市場にしがみついて多角化のチャンスを逸してしまい、経営資源を消耗させてしまう場合もある。