業種特性の分析?その3

 これまでのコンサルティング経験では、流通業への転身を提案したことはあったが、殆どの場合、3つの指標の組み合わせを丁寧に検証してみることで、事足りたケースが殆どであったと記憶している。ただし、財務体質が劣化し過ぎてしまい、経営改善を実現するまでには至らなかったケースも多かったことも事実である。
 また、かろうじて改善できたケースと比較的順調に改善できたケースを比較してみると、やはり経営者の意気込みの違いである。しかし、それは経営者の資質を意味するものではなく、あらゆる努力が実らず闘志が萎えてしまっている状態にあったかどうかによるような気がしている。つまり、体力の消耗状態によるものだと考えられる。
 一方、瀕死の状態にありながらも、一筋の光明を見出し果敢に挑戦している経営者もいる。そうした場合、当方の提案に対しても矢継ぎ早に質問を返してくるし、理解も早いので短時間で結論を導き出すこともある。こうした頼もしい経営者は、同じ思考様式で物事を考えているからではないかと思われる。つまり、情報を共有できているわけである。
 具体的には、付加価値生産性を高めるということは、1人当りの売上高を増大させるか、付加価値率を高めるしかないと固く信じている経営者には、中々理解してもらいにくいのであるが、既にそうした思考的バリアを打ち破っている経営者にとっては、全く抵抗がないので、チャレンジ精神に火がつき易いということかも知れない。
 いずれにしても、上記の付加価値率、人件費率、労働分配率、付加価値生産性の4指標のポジションによって形成される扇形を、上から押しつぶした型にできればよいわけであり、そのためのポイントは直接的には付加価値率、人件費率、労働分配率の3指標間の調整にあることを理解できれば、多少スローペースでも試してみる気にはなるようだ。
 最終的に実施の段階まで至るかどうかは、経営資源の再配分やメンバーの動機づけとも関連するので保証の限りではないにしても、論理的思考を積み重ねていくことで、具体的な目標設定とこれを達成するための道筋が明らかになれば、メンバーのやる気が引き出せることになり、組織が同じベクトルに向かって動き出す環境は整うはずである。