業種別・規模別特性の分析?構造パターンその2

 2つ目は「卸売業パターン」である。この業種の構図の特徴は、「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」の3指標はほぼ同一の性質(3指標とも付加価値生産性とは逆の性質)をもっているのは、「製造業パターン」、「建設業パターン」と同じであるが、3つはやや距離を置きながら並列しており、「付加価値生産性」からは同程度の距離がある。
 この状態は、「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」が独立して「付加価値生産性」の向上を妨げる要素になっていること示しているから、それぞれの指標を詳細に検討することで、ある程度付加価値生産性を高めることは可能であるということになる。もちろん、他の2つとも連動させればより効果が上がることは当然である。
 3つ目は「小売・サービス業パターン」である。この形は基本的には「卸売業パターン」に似ているが、「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」の3つは独立しているものの、「付加価値生産性」との距離関係が異なっていることである。例えば、「付加価値率」は「付加価値生産性」を高めるためにかなり貢献している場合もありえるなどである。
 ミクロ的に観察すれば全ての企業が異なるように、ここで掲げた4つのパターンでは説明しきれない場合もあり得る。しかし、異質性を追求すれば、違いが明らかになるメリットはあるものの、戦略の絞込みという点から言うと、全く絞込みができないのと同じことであるから、まず、大枠のパターンの中で自社の位置を確認することの意義は大きい。
 市場競争に打ち勝つためには、まず己を知ることであるという大原則に従えば、業種・業態内でのポジションを掴むことで、最も効果的な経営資源の再配分がデザインできるから、体力の消耗も最小限に止めることにも繋がる。自社のポジションを知らず、闇雲に突き進んできたという反省を新たにするためにも有効であると思われる。
 当研究所では業界や産地産業の特徴を把握するための分析も行っており、そうした分析を通じて、収益や利益に直接的にはもちろん、間接的に繋がる構造改善策を提案してきたが、経営者自身が常にこのことに興味を持ちながらも、現実には把握しきれていないケースが殆どであったため、ある種の危惧感からここに紹介するに至ったものである。