業種別・規模別特性の分析?構造パターンその1

 これまで業種別における企業規模ごとの位置づけを明らかにするため、製造業、建設業、卸売業、小売業、不動産業、運輸業、サービス業、情報通信業の8業種についてポジショニング分析を行ってみた。この分析を補完する意味で、まず、はじめに全業種の位置づけを把握して、これを参照しながら上記の個別業種分析を行った。
 この分析で明らかになったことは、「1人当り売上高」、「1人当り付加価値額」、「1人当り利益」、「1人当り総人件費」の4つの指標は、多少のバラツキはあるものの、ほぼ企業規模と「付加価値生産性」を代表しているということであった。次は、「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」の性質が業種ごとに異なるということであった。
 これらの指標の性質から、「付加価値生産性=1人当り付加価値額」、「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」の4つの組み合わせパターンにより、業種ごとの特性がビジュアルに把握できると考えられる。ただし、この場合の「付加価値率」、「労働分配率」、「人件費率」は、文言本来の意味とはかなり隔たりがあることに注意する必要がある。
 まず、第一のパターンは「製造業・建設業パターン」である。この特徴は「付加価値率」と「人件費率」がほぼ同じ性格であるが、「労働分配率」とは同質性(3指標とも付加価値生産性とは逆の性質)をもちながらもかなり距離があるということである。つまり、このパターンでは、「付加価値率」が高くても「労働分配率」はかなり低いこともあり得る。
 すなわち、製造業・建設業では「付加価値率」を高めるためには、「人件費率」を引き上げることが不可欠であるが、これに固執すると「労働分配率」を高めてしまい、結果として「付加価値生産性」をあげることができないことになる。逆に言えば、「付加価値率」の低下を容認しても、合理化投資により「労働分配率」を引き下げることが肝要である。
 ただし、「付加価値率」を低下させるということは、「人件費率」を低下させることを意味しているから、必然的に「労働分配率」もそれ以上に低下させることが不可欠な条件となるため、売上高の伸張も含めてシミュレーションを繰り返すことは不可欠である。いずれの場合でも、単なる数字合わせになってしまっては意味がない。