業種別・規模別特性の分析?情報通信業

 情報通信業は、全業種の中でも付加価値率と付加価値生産性が最もバランスしている形で、全業種の中心に位置している業種であるが、付加価値生産性とは対立関係にある3つの要素間の関係を見てみると、付加価値率と人件費率、分配率と人件費率はそれぞれ相関が強いが、付加価値率と分配率との相関はあまり高くはないという関係にある。
 固有ベクトルの内容をもう少し詳しく見てみると、主成分2の要素は全くなく、すべての要素がマイナスであるが、労働分配率は主成分1の要素が強くかつ主成分2は0に近く付加価値生産性とは正反対であるため、付加価値率、付加価値生産性、労働分配率の3つの要素はお互いにかなり遠い位置関係にあることが確認された。
 以上の構造を前提にして、主成分得点(規模別企業群の位置付け)をみると、2?3未満は、人件費率、労働分配率、付加価値率ともに高く、付加価値生産性は低い位置にある。2未満、5?10未満、3?5未満、20?50未満は、人件費率、労働分配率は高いが、付加価値率は特に高い。そのため付加価値生産性は低く、かつこれらはかなり近い位置にある。
 1,000以上は、付加価値率はやや低いが、付加価値生産性は高い。50?100未満、10?20未満、100?1,000未満、規模計は、付加価値生産性は中程度であるが付加価値率は低い。特に10?20未満は、付加価値率が平均の39%に対して18.7%と極端に低いが、労働分配率、人件費率ともにかなり低いため付加価値生産性ではかなり健闘している。
 こうしてみると、付加価値率を高めることに固執すると、付加価値生産性を低下させてしまうという傾向は情報通信業でも見られるため、別の見方をすれば中小企業でも人件費率と労働分配率のバランス次第では、ある程度の付加価値生産性を確保することは可能であるともいえるが、その場合は両者とも付加価値率から遠い位置にあることが前提である。
 情報通信業の場合は、どちらかというと人件費率と付加価値率が近い位置にあることから、付加価値生産性を高めるアプローチとしては、労働分配率を抑えることでストレートに改善を目指す方法と、人件費率と付加価値率を少しずつ抑えることで迫る方法が考えられるが、どちらが有利かという問題ではないのは当然である。