業種別・規模別特性の分析?小売業

 この業種の特徴の一つは、「付加価値率」が「人件費率」とやや弱い相関があるだけで、他のどの指標とも性質が異なっていることである。それは、「分配率」および「人件費率」は互いに相関が強く、かつ「1人当り売上高」、「1人当り付加価値額」、「1人当り利益」、「1人当り総人件費」とは負の相関があることからも確認される。
 「1人当り売上高」、「1人当り付加価値額」、「1人当り利益」、「1人当り総人件費」はお互いに相関が強いことから、小売業界においても、これらの指標は付加価値生産性を表していると見て間違いなさそうであるが、付加価値率と付加価値生産性とがそれほど反発し合っていないところを見ると、両者はあまり遠くない位置関係にあるようだ。
 実際にプロット図で確認してみると、3?5未満および5?10未満は、付加価値率は高いが人件費率も高いため付加価値生産性は低い。10?20未満、20?50未満、規模計は付加価値率、付加価値生産性とも中程度で均衡している。2未満、2?3未満は、労働分配率が高いことが原因で、付加価値率、付加価値生産性ともに低い状態にある。
 50?100未満は、付加価値率は低いが付加価値生産性は比較的高い。100?1,000未満は、労働分配率と付加価値率とが均衡している位置にあるため、付加価値生産性はかなり高められているが、ポジションとしては20?50未満や規模計に近い。1,000以上は付加価値率も高く、労働分配率、人件費率ともに低いため、付加価値生産性も高い位置にある。
 以上見てきたように小売業は、他の業種に比べ各規模の企業グループがほぼ5つのゾーンに分かれて分布している。つまり、これらの特性が比較的はっきりしていることから、それぞれぞれの存立基盤も独特のものがあることを示唆していると思われる。これらの特徴を参入障壁とみなせば、それなりの戦いが展開できる可能性が残されている。
 例えば、50?100未満は、100?1,000未満に比べて、付加価値率は低く労働分配率は高いが、1人当り総人件費が低いため人件費率が低い。そのため付加価値生産性そのものはやや低いが、1人当り売上高、1人当り利益が高いので、相対的に付加価値生産性を押し上げることになり、業界のでもポジションは1,000以上に次いで高くなっている。