中小業は情報武装で本領発揮すべき?その3

 中小企業がIT化に乗り遅れているのは、ニーズとシーズのギャップに戸惑っているからではないかとも考えられる。すなわち、ニーズとはウォンツ(願望)と需要の中間に位置する概念であり、シーズとはこれを満たす技術や材料のことであるが、どちらが先行して商品開発に結びついたかによって、ニーズ型とかシーズ型という呼ばれ方をする。
 どちらかというと、労働集約型である中小企業の場合はニーズ型であったから、ユーザーの顕在化された求めに応じることをメインに据えていた。そのため、潜在的なものも含めたニーズに応えようとして、技術や品質を高めるように経営努力を集中してきため、ITの出現を積極的に受け入れる素地が育っていなかったものと思われる。
 業務や生産方法を高度化することを主眼に考えれば、労働集約型である業務はなるほど遠い位置にあると感じても無理からぬことではあるが、経営情報の収集・分析という点では、ITを抜きにしても一大関心事であったことは間違いない。これを合理的に解決する手段(シーズ)が新たに登場したと考えれば、それほど抵抗はなかったはずである。
 一般的にいって、ニーズとシーズのギャップが大きい場合は、これらを結びつけ商品化するにはかなりの回り道を経なければならないが、一旦辿り着くと、あっという間にその周辺分野に応用される。ここまで来ると中小企業の取り組みが加速され、持ち前の強みが発揮されることになるのだが、変化が大き過ぎたため受け入れに戸惑ってしまった。
 なにしろ、オフコンが登場した頃はマイホームよりもはるかに高額で高嶺の花だったし、性能も現在とは比べものにならなかった。一部の新しがりやが基礎的な知識もないままIT化に踏み切り、手痛い目にあったこともかなりあった。こうした経験がトラウマになってしまい、日和見的な態度から未だ抜けきれない面もある。
 しかし、これまでの経験からITに対してアレルギー反応を示していた経営者も、現在の成功事例を目の当たりにして、ITの真の威力に目を向けるようになってきている。一周遅れの感は否めないとしても、この波に乗らなければ永久に戦い場に立てないことを悟った以上、ITに対して付加価値を付けるのはこれからである。