中小業は情報武装で本領発揮すべき?その1

 日本の製造業の生産設備は今でも世界のトップレベルにあるという。しかし、グローバル化した世界での販売競争力は必ずしも高くはない。一頃は、人件費比率の高さが価格競争力を低下させているというのが定説であったが、ITを活用することで生産性を高め、ブランドやデザインなどで付加価値を高めることに成功した例もある。
 ここでのテーマは、「高齢社会における共存のモデルづくり」であったから、労働集約的な中小企業の役割の重要性を強調してきた。その姿勢は一貫して変わるものではないが、労働集約型企業とはいえ、情報を収集・加工することで企業の競争力を高めることは怠るわけには行かないとすれば、IT化を取り込むことは拒絶できない。
 ただ、このことによって高齢労働者が労働市場からはじき出されることがあってはならない。だとすれば、IT化を取り入れることで高齢者を活用できれば問題ないわけで、そうした仕組みづくりを模索すればよいことになる。
 ITと高齢者は相性が悪い象徴のようにいわれてきたが、今やパソコンを自由に操り、インターネットを楽しんでいる高齢者は決して珍しいことではない。高度なテクニックや知識を必要とする部分は若年者に任せるとしても、日常の業務の中でIT機器がネックになり、業務に支障が出るということはあまりなくなってきている。
 ましてや、この技術を活用してもなお賄いきれない業務と組み合わせれば、まだまだ一役も二役も果たせる余地は残っている。例えば、個別対応のサービスや小ロットの受注生産には人手が重要な役割を果たさなければならないし、今後顕在化する長寿社会では個性の持ち主が主役になるのだから、そうした市場が創造される余地は大きいと思われる。
 二極化という言葉はいかにも誘導的で個人的には好きになれない。中小企業は持ち前の企業化精神でこうした風潮を打ち破り、長寿社会の多様性を市場創造のチャンスと捉える志向に変わらなければならない。それはITと人がお互いの存在感(機能)を認め合いながら共生する社会システムを目指すことでもある。