投資計画は企業価値をベースにして?その2

 さて、投資計画と企業価値の関係についてであるが、キャッシュフロー経営を志向する企業は、資金の還流性を重視して企業価値を評価するだろうが、他の企業は、総資産の現在価値あるいは純資産額に着目する場合もあるかもしれないので、企業価値を一元的に評価することはできないが、一般的に言えば収益力を基準に考えるのが妥当である。
 この場合の価値基準は、投下した設備効果によりもたらされる経常利益ないし利益率の向上である。ただし、設備直後は総資本が膨らむので直接的な経常利益率は低下するので、平均投資額で捉え直さなければならないが、設備投資により固定資産が増大すれば、稼働率とは関係なく企業の物理的交換価値は増加することになる。
 つまり、M&Aなどの場合は、買収企業の経営力によっては設備の残存価格や市場価格のみが問題であるが、キャピタルゲインを目的とする株主にとっては、株価純資産倍率やROE、ROIが注目の的である。したがって、少なくとも設備投資を積極的に行う場合は、資金調達の手段も含めて現在の企業価値がベースになる。
 このように考えると、生産能力の増強を目指すだけの投資計画では、企業価値をあげることには繋がらないこともある。実際に設備投資が過大にのしかかり、経営を硬直化させているのは何故なのだろうか。結局のところ、現在の自社のポジションを正確に把握しないまま、投資に踏み切ってしまったことに原因があるように思われる。
 中小企業が設備投資を計画する場合は、まず、市場における自社の位置づけを確認し、設備投資によりどのポジションへの移動を目指すのかを明確にしなければならない。これには、まずITを活用して知識集約型の組織に脱皮することから始め、これをベースにして戦略の焦点を絞り込むという二段構えで望むべきである。
 IT化の遅れとはIT関連の設備投資の遅れのことではなく、ITを活用してナレッジマネジメント型の企業に変身する意思決定の遅れのことなのである。すなわち、ネットを活用するだけなら、特に身構えて投資をするというレベルのものではないので、まず、投資よりも既存のインフラを活用することから始めるのが一番である。