投資計画は企業価値をベースにして?その1

 投資計画には当然目論見があってしかるべきだが、ともすると希望的観測が先行してしまい、資金調達のみに目が向けられてしまうことがよくある。現実にそのために生じた過剰投資が命取りになったり、そこまでには至らないにしても、経営が硬直化してしまい身動きができなくなってしまった例は数限りない。
 こうした苦い経験を今後に生かすためには、投資額を年々得られることが期待できるキャッシュフローを資本コストで割り引いて、企業価値を明確に測定しておく必要がある。換言すれば、安定したキャッシュフローが得られる可能性をどの点におくべきか、事前に掌握しておかなければ安易に投資決定をすべきではない。
 キャッシュフローを事前に把握するといっても、投資額や資本コストとの兼ね合いもあるので、実際にシミュレーションしてみる場合は、これらの3つの要素を入れ替えながらおこなわなければならないが、どれ一つとっても確定的に捉えることはできないため、まず、市場における既存製品のシェアを基に販売予測を先行させることになる。
 当然この予測も不確定であるわけであるから、これを獲得するために必要な設備投資も確定するわけには行かない。また、その設備の減価償却費もキャッシュフローに参入されることになるし、その資金の調達コストも仮設定するしかない。つまり、三すくみの状態で意思決定を行うことになるので、慎重に検討しなければならないことになる。
 このように考えると、投資計画はリスクが大きいので、差し控えた方がよいといっているように思われるかもしれないが、決して消極的であることがよいといっているわけではない。資金を固定化してしまう設備投資を実施するということは、単なるサクセスストーリーでは成功はおぼつかないことを熟慮すべきであると言っているのである。
 結局のところ投資計画は、市場目標と財務目標を交互に仮設定して、シミュレーションを繰り返し、実現可能性を検討していくしかない。具体的には綿密な市場調査に基づいて販売の可能な数量と金額を算出し、それを支える設備投資の可能性を検討する。次はこの逆の手順でアプローチをする。この繰り返しで満足化水準を見つけ出すしかない。