低生産性は中小企業の誇り?その3

 低生産性は中小企業の誇りであるという意味は、中小企業が低生産を好んでいるという意味ではない。低生産性を解消しようとすると、雇用体系が崩壊してしまい失業者が続出するのを防ぐため、ストッパーの役を担っていることに自信を持つべきだということである。その根拠は以下に示す統計資料からも窺われる。
 厚生労働省「高年齢者就業実態調査」(2004年)によると、企業規模5,000人以上の企業は、60?64歳の労働者を1.6%雇用しているに過ぎないが、5?299人規模では5.1?6.7%も雇用している。また、業種別では不動産業:9.4%、鉱業:7.8%、教育、学習支援業:7.2%、建設業:6.6%、情報通信業:6.5%、卸・小売業:5.4%と続いている。
 このように、中小企業の高齢者雇用率は大企業に比べ4倍近くも高くなっている。しかもその割合が高い業種は労働集約型の業種であることから、産業構造を支え続けるためには中小企業の存在が欠かせないことを示している。個別企業の問題は別しても、全体構造として機能させるためにはIT化だけでは解決できない。
 すなわち、IT化が遅れている企業群と低生産性の企業群は、統計的にみると相関関係にあるように見える。しかし、統計的な数値だけでは因果関係があると決めつけられないこともある。例えば、今話題になっている合計特殊出生率は、近年1.2台まで落ち込んでいるが、これと反比例するように高齢化率は上昇している。
 この関係を負の相関があると判断するのは明らかに誤りである。確かに、子供の生まれる数が少なくなれば、平均寿命が一定している場合は、高齢者の割合は相対的に多くなるが、これは相関関係があるのではなく、単に出生率の低下を説明しているに過ぎない。ましてや、平均寿命が伸びていることとは直接関係はない現象である。
 IT化と低生産にも同じような関係があり、もともと労働集約的でIT化の効果が薄い業種が積極的に取り組まなかっただけであるとも考えられる。結果的に符合していることをもって、あたかも因果関係があるように結論づけるのは誤りである。つまり、中小企業はその役割に徹しただけなので、これを誇りにすべきであるといっているのである。