低生産性は中小企業の誇り?その2

 ニッチ型企業を志向したとしても、全ての中小企業が消費者の鉱脈を掴むことができるとは限らないので、実態としては、大企業への移行を目指すこともあるだろうし、中小企業の役割に徹する道を選ぶ場合もあるかもしれない。いずれの場合も、現在の市場競争をそのまま延長するのでは先細りになるのは確実である。
 ある中小製造業の経営者に言わせると、「製造原価に占める人件費の割合の高さは、合理化投資では埋めることができない。したがって、売上が減少しているのはアジア諸国の人件費の安さによるもので、中小企業の努力の域を超えている」というのである。その企業の現状を考えると、確かに体質改善は困難であると判断せざるを得ない。
 しかし、同じ業種でもこれまで売上高に占める人件費比率が20%台であったものが7%強に削減でき、市場競争力を強めている企業もある。産地を巡回すると隣同士でもこうした現実に出くわすことはよくある。この差は自助努力だけによるものではないにしても、ピンチをチャンスに変える転機はそれなりにあったものと思われる。
 人件費比率を7%台まで削減できた企業も、必然性をたどれば納得のいくことの積み重ねであることが判明した。この企業の場合は、二重構造の中の二重構造を活用して、新たな分業構造を構築したもので、要するに同一のチャネル内の無駄を省いたもので、手法としては決して高度なものではないが、取り組んだ姿勢には敬意を表したい。
 一般に人件費比率の低下を目指す場合、第一に考えるのが内製化率を高めることで稼働率を上げることである。そのため、外注を極力抑える方向を志向するのがほぼ常識になっているようだ。しかし、外注は場合によっては経営スリム化の調整便としてはたらく場合も多く、単に切り捨てるだけでは、重要なパートナーを失うことになりかねない。
 自社のルーツを冷静に振り返って、何が売上や利益に寄与する重要な要素かを見極める必要がある。こうした地道な分析を繰り返すことで、まず、打たれ強い体質を作ることが先決である。この分析がとりもなおさず、自社の存立基盤を明らかにすることに繋がるので、力を温存させながら今後の方向をじっくり模索することである。