低生産性は中小企業の誇り?その1

 会社で誰が偉いかと聞かれれば、だれでも社長であると答えるであろう。しかし、誰が一番働いているかと聞かれれば、即座に答えるのは難しいかもしれない。人間も同じことで頭があるからこそ手足が動くことことに異論はないが、だからといって手足はあまり必要ないとは誰も思わないのではないだろうか。
 最近は聞かれなくなった言葉に二重構造というのがあった。それは大企業と中小企業の分業構造のことであるが、IT化が進展している今日もなお厳然と存在しており、むしろその格差が拡大していることに問題があるのだが、抜本的な解決策は見つかっていない現状にありながら、IT化の遅れだけを誇張しているように見える。
 高度成長期といわれた時代は、大企業は設備投資を盛んに行ったため、総資本の回転率が小回りの効く中小企業より劣っていたため、総資本利益率レベルでは現在のような格差はなかったが、人材育成や情報収集・加工力が増強されるにしたがって、大企業は総資本回転率を大幅に向上させることに成功し格差は一段と広がった。
 現在でも相変わらず中小企業の低生産性の原因は、IT化の遅れだと指摘する声は大きいが、この規模のままでIT化を促進したとすれば、生産性向上によって余剰となった労働者はどこでどのように活用されるのだろうか。また、大企業に変身したとしても市場の拡大が望めなければ、この構造は原則として崩れることはないはずである。
 このことを誰よりもよく理解しているのが中小企業者なのであり、費用対効果を考えると体力の消耗を加速させる戦は避けるべきだと考え、敢えて積極的に行動しないだけなのだが、パイの分配率は確実に変化している。これが二極化を顕在化させたプロセスであると考えれば、「みんなで100点」のような声がけはうつろに響くだけである。
 それでは当の中小企業者は、どのようなアクションを起こせばよいのだろうか。競争社会の中で生き抜くことを前提にすれば、市場を創造してコンパクトではあるが、しっかりとした参入障壁を築き、限定的なニーズに対して深い満足を提供する企業を目指すしかない。それには高齢者のライフスタイルを研究することが不可欠である。