中小企業の支えに依存している大企業

 中小企業の存立基盤をより強固なものにするため、その特徴を実際のデータを用いてもう一度検証してみる。まず、大蔵省「法人企業統計年報」(全国の営利法人:30,502社)により、平成6年度の全産業(資本金規模別)の生産性関係の指標をみると、資本金5?10百万円未満では、付加価値率(粗):26.6%、一人当り粗付加価値:461万円である。
 一方、資本金、1000百万円以上では、付加価値率(粗):20.1%、一人当り粗付加価値:1,385万円である。次に平成16年度における同指標をみると、資本金5?10百万円未満では、付加価値率(粗):27.9%、一人当り粗付加価値:399万円である。1000百万円以上では、付加価値率(粗):21.2%、一人当り粗付加価値:1,670万円である。
 一見して認識できるように、付加価値率では平成6年度も16年度も小規模企業の方が勝っているが、一人当り粗付加価値では小規模企業では13.4ポイント低下しているが、1000百万円以上の大規模では20.5ポイントも上昇している。この差がいわゆるITなどへの投資格差なのだろうか。果たしてそう結論づけて間違いないかどうか疑問が残る。
 確かにこの33.9ポイントの格差を見る限り、合理化投資の遅れが付加価値生産性格差の原因であるという論理は成り立ちそうだが、そうだとすると、現在ほどではないにしても、元々企業規模間にあった格差はどう説明するのだろうか。これはむしろ規模の経済が加速した結果だとみるのが妥当なように思われてならない。
 更に大きな疑問は、IT化によって付加価値生産性を向上させることが可能なのであれば、合併などにより規模を拡大してIT化を推進すれば、中小企業にも同じようにチャンスがあるのかということである。そう考えるとIT化をもってITと戦うことは出来ても、規模の壁は征服できないことを中小企業はよく心得ていることが根底にありそうだ。
 つまり、どんなに勉強してもみんなで1番にはなれないことをよく知っているため、引き立て役に回っているのであって、IT化の促進を拒んでいるわけではない。むしろ、熾烈な戦いを回避することで固有のテリトリーを守り抜き、雇用機会の確保やファンドメンタルな消費需要を支えていることを大企業としても再認識すべきである。