反骨精神こそ中小企業の最大の経営資源?その2

 この場合、中小の販売業者がとり得る戦略は幾つか考えられるが、基本的には自社が特意とするカテゴリーの商品や付帯するサービスを充実させて、集中的に攻撃を仕掛けるなどの報復措置(防衛措置)をとることであろう。そうした戦略は図らずも、消費者に選択の幅を提供することになり、補完関係が築かれる結果となることもある。
 このように、総合化にも専門化にもメリットとデメリットがあり、お互いの領分を侵さないように工夫することが、消費者の支持を得る秘策でもあることを学習した結果、中小企業の反骨精神が生かされる土壌ができつつある。しかし、二匹目のドジョウがいるとは限らないので、もっと存在感をアピールする努力は必要だ。
 IT化は定型的でシステム的な業務には滅法強く、中小企業にも多くのメリットを提供しているが、標準化しにくい消費者の深層心理に関わる動きについては、まだまだ、確実に捉えることは苦手のようである。今後の研究はかなりこの部分に迫ってくるものと思われるが、意思決定のメカニズムを捉えることは難しい。
 以前に紹介した魚屋さんが繁盛し続けていていられるのは、自店の顧客の家族構成から、干物の調整具合、旬のものへのこだわりまで全て店主の頭にインプットされているという強みであった。そして、それが関係づくりマーケティングの原点になっているで、これは最早反骨精神と評していいかどうか迷うところである。
 最近学者が好んで使う言葉に二極化というのがある。たしかに、負け組みと勝ち組、高品質志向と価格志向などの社会現象を説明する場合には便利な言葉ではある。しかし、これはあくまで象徴的に捉えようとした場合のくくりで、実際には多様な分類が内蔵されている場合も多く、無理に両極に区分するのはかえって不合理である。
 中小企業は自社が存在することの意味を問い直し、それが小さなくくりに属することをむしろ誇りに思うべきだ。もちろん、企業経営は経済性を追求しなければならないという使命を背負っているが、一つのこだわりを拠り所にして消費者の喝采を浴び、大企業をうらやましがらせている中小企業もたくさんあることを忘れてはならない。