中小企業は環境メンテナンス産業の推進役

 ここで掲げた環境メンテナンス産業とは、ほころびかけている自然環境をリフォームするだけではなく、教育や福祉のあり方までも包含した社会システム全体をイメージしてのものである。環境をこうした切り口で捉えることで、中小企業にも新たな存立分野を見つけ出すヒントが見つかるのではと考えたからである。
 つまり、IT化から取り残された非効率な企業群として烙印を押され、自らも自暴自棄になりかけている中小企業にエールを贈ることが目的であるが、あまりにも抽象的で現実にどう向き合ったらよいのか戸惑うかもしれない。しかし、翻って考えてみると環境は文字通り身近な生活空間でもあるから、誰にとっても触手可能なものである。
 エコ商品やエコファンドなどに象徴されるように、地球規模で環境メンテナンスへの取り組みが既に始まっている。省エネ、省力化は元々何でも減らせばいいという発想からのものではなく、そこで生活している人間や他の生物が共存するための知恵なのであり、この原点を見つめなおすことで、本来の環境を取り戻すことが今求められている。
 戦後の復興から高度成長期を経て、オイルショック、バブル崩壊、そしてIT化と目まぐるしく変わる環境に翻弄されながらも、懸命に生きてきた我々は、ふと気づくとあらゆる資源を食い散らし、環境を破壊し続けてきたことに愕然とする。今こそ、持続可能な循環型社会を構築するため、立ち上がらなければならない。
 そこで中小企業の果たすべき役割だが、この環境メンテナンスはいわば合理化の落とし子であるから、逆に合理的な手法は通用しにくい。一酸化炭素の削減なども設備投資による解決を目指せば、更に資源を浪費することにもなりかねないので、本質的には草の根レベルによる根強い運動を展開していくしかない。
 すなわち、この取り組みを成功させるには、一般市民の協力が不可欠であるということだ。中小企業は率先して環境メンテナンス産業に変身したことを宣言し、新しい価値を提案する具体的な姿勢を打ち出すことである。フットワークのよさを活かし、力技しか持ち合わせていない巨大化にひと泡吹かせるチャンスである。