中小企業の市場創造活動

 景気が上向いているとはいうものの、消費市場が拡大しているわけではなく、好業績をあげている企業はIT化などによる合理化で、付加価値生産性が向上したため、主に人件費コストの節約が功を奏した結果と見られる。パイを奪われた中小企業は、合理化投資を行ったとしても新たな市場を見つけ出さなければ、売上を獲得することができない。
 こうした状況下においても一筋の光明は見えるようである。それは、地球温暖化を始めとした環境問題が山積しているなか、中小企業が取り組める分野を見出すことができれば、余剰気味の経営資源を振り向けることができる。ここでは、中小企業の新たな進出先として有望な分野があるかどうかを検討してみることにする。
 一酸化炭素排出量規制などの問題は、装置産業を中心とした大企業が取り組むべきであるが、中小企業でもそれなりの役割を果たすことは可能である。例えば、産業廃棄物ばかりでなく、一般家庭用の廃棄物の排出量を抑制する、適正な処理方法を考案するなど従来から取り組んできたものに加え、ゼロエミッションに挑戦する価値はある。
 ゼロエミッションに対する取り組みは、かなり以前から始まっているが目立った成果は上がっていない。この仕組みは理論的には可能であっても、バックワードチャネルが整備されていないため、廃棄物=原材料という等式が成り立たないためである。つまり、需要と供給のバランスが悪いため採算ベースに乗らないのである。
 バイオ科学が脚光を浴びているので、中小企業でも直接チャレンジしてみる価値はあるかもしれないが、周辺分野に拡大して考えればビジネスチャンスは見つけ出せる。取り組みが具体化している例として、建設会社が保有する重機を農業に転用して、循環型の農業を目指しているものやアイデァを農業者が提供しているものなどが挙げられる。
 これらの取り組みはいずれも徒についたばかりであるが、中核となる部分は先端技術であるとしても、標準化しにくい労働集約的な部分もかなりあることから、付加価値生産性の低い分野を得意とする高齢者を活用できる。こうした部分は、労働集約的であるがゆえに大企業の参入を防止できるというメリットもある。