まず隗より始めよ

 団塊の世代は多くの特徴をもっているが、その最大のものは独立自尊型のライフスタイルを形成してきたことにある。加齢とともにそうした特長は薄れてきた感はあるものの、本質的には世代の特徴として脈打っているはずなので、社会システムのしがらみから一応開放されたこの機に、高齢者の新しい生き方を提案してもらいたい。
 まず始めにオピニオンリーダーとして、新しい形を社会に提案してもらいたいものだ。流行とはそうしたものから始まり風俗に発展し、やがて文化となって定着するものだから、IT化の進展を目の当たりしてきた生き証人として、後世に残せる新しいライフスタイルづくりに取り組み、そのプロセスもじっくり見せるべきである。
 小さな第一歩を踏み出すだけでも、目聡い企業の目に触れるところとなれば、そのスタイルを丸ごと売り込めるチャンスにできる。「まず隗より始めよ」と迫るわけである。つまり、自分たちの小さな第一歩を大事に取り上げてくれる企業なら、腕に自身のあるオピニオンリーダーがたくさん集まりますよ、といってアピールするわけである。
 従来はこうした仕掛けづくりは手間暇もかかり、個人レベルでは不可能に近かったが、IT時代の今日、小資本でもアイデァ次第で多用な展開ができるようになっていることは、団塊の世代の諸氏には説明するまでもないことである。ただ、前述のようにある程度の塊をもったものでなければ、見逃される可能性もあることに留意しなければならない。
 この仕掛けの勘所は、新しいライフスタイルを指向している集団の存在を、どのようなくくりで切り出し、確実に束ねられるかを明示することにある。そこでは、少なくとも初期段階では市場性を前面に打ち出すのではなく、生き方のモデルをまず提示することにある。企業との間でキャッチボールが始まるまでは多少のリードタイムは必要だ。
 当然このライフスタイルは、ニーズの束でもあるわけだから、この生活シーンのなかでどのような小道具(製品)が必要となるかまで、ビジュアルに表現できる準備は必要であり、これが企業側から見た場合の商品(製品)コンセプトであるから、プロシュマーとしての存在感をにじませたものにできれば、一石二鳥の効果が期待できる。