高齢者はプロシュマーたれ

 今後順次定年を迎える団塊の世代は、かつて新人類と呼ばれた子供たちの親でもあるから、消費生活においても、個性的で大量生産・大量消費を受け入れた世代とは一線を画している存在であり、万人むきの既製品に飽き足らない、いわゆるうるさい存在であるやに見受けられる。この個性をどのような形で維持・発展させようとしているのだろうか。
 IT化の進展により、双方向のコミュニケーションがリアルタイムで実現できるようになり、これまで非対称であった情報が共有できるようになってきたことから、生産者が造ったものをただ受け入れるだけであった消費者は、製造方法や原材料に対しても細かくチェックし、意見を述べ製品に反映させられるようになった。
 こうした消費者は、従来型の消費者と区別されプロシュマーと呼ばれるようになった。これは、消費者を意味するコンシュマーと専門家であるプロを組み合わせた造語で、生産にも影響力を持つ消費者を意味するもので、時には、製作にも直接関わりをもったり、自分で試作品を作成したりするモニター的存在でもある。
 こうした概念が登場した背景にも、団塊の世代の消費態度が見え隠れしていたといっても過言ではないことから、今後は昔とった杵柄をグレードアップする形でシステム化すれば、本格的なプロシュマー集団が出来上がる。この集団の果たす役割は消費者にとっても企業にとっても貴重な存在となるはずである。
 企業にとってのメリットは、自社の経営資源を集中できる分野を明確に示してもらえるわけだし、この鉱脈に沿って差別化戦略を遂行することもできる。もしこの市場のサイズが小さい場合は、同心円を拡大して描くことで、周辺分野のニーズにも触手を伸ばすことができる。つまり、経営のシナジーを活かせるわけである。
 一方の消費者にとっては、当然自分のごのみの製品を既製品並みの価格で購入できるし、何よりも、企業側に自分を売り込むチャンスが拡大するわけだから、良質の労働市場であることも同時にアピールできる。このことは、とりもなおさず企業側のメリットともなり、これまでのような雇用のミスマッチは解消されることになる。