付加価値生産性が低いのは高齢化のせいなのか

 日本の企業の付加価値生産性は、米国の70%程度でOECD加盟国の平均よりも低い。この原因は識者に言わせると、異口同音に指摘するのがIT化などによる業務の効率化の遅れである。しかし、製造業だけで見るとOECD加盟国の中で3位であるということを考え合わせると、非製造業だけが業務の効率化に遅れていることになる。
 製造業の中でも輸送機器や石油化学製品は平均を上回っているが、電気機械、精密機械などは低い水準に止まっている。一方で、金融保険業、通信業などは平均に近いこと考えると、企業のマーケティング力や事業規模、景気動向、国際情勢なども、付加価値生産性の水準に大きく影響していると見るべきではないのだろうか。
 例えば、小売業の売上で見ると米国の3割程度なのに、事業所数では米国よりも2割も多い130万店(2002年)で、全体の6割が個人事業所であるから、こうした構造を改善しなければ、IT化などによる業務の効率化を図ろうにも、おのずと限界があるともいえるが、果たして付加価値生産性だけで企業価値を決めていいのだろうか。
 付加価値生産性が高いということは、必ずしも付加価値率が高いということを意味するものではないが、付加価値額が大きくなければ生産性も低いと考えられ、その構成要素である、賃借料や金利などは景気の動向によって左右されるし、租税公課は前期の利益を反映している部分もあるので、その期における企業努力とは必ずしも結びつかない。
 また、減価償却費は原則として売上高に左右されない固定的なものであるから、こうした制約条件の中で付加価値額を増大させるためには、総人件費と利益を最大にするしかない。総人件費と利益の差は横綱と幕下よりもあるので、結局総人件費を大きくするしかないが、そうすると付加価値生産性を低下させることになってしまう。
 何故ならば、付加価値生産性よりも利益を優先させるため、労働分配率を抑え込むように努力すると考えられるからである。つまり、多くの企業が付加価値生産性の向上を目指すということは、省力化を指向するということに他ならないが、その場合は、総付加価値も相当しぼんでしまうことを覚悟しなければならないことになる。