既存の市場は拡大傾向にあるが、経営資源は劣っているといった場合

 市場が拡大傾向にあるため、積極的に競争戦略を展開したいところだが、そのために必要な設備投資能力や資金調達力が不足しているため、市場における相対的シェアはジリジリ後退し始めているといった状況であろうか。こうした場合にとり得る戦略は、経営資源の総量ではなく、細分化の基準と資源の質を対応させて存立基盤を設定することである。
 基本的にはニッチ型かフォロワー型ということになるのだろうが、問題は経営資源の中身である。まず、既存市場ないしその延長線上で存立基盤を確立できる可能性があるのか、言い換えれば、経営資源を再配分して集中すれば戦える市場(細分化した市場)を見つけられるのか、という問題を解決することが先決である。
 しかし、一般的にはそうした分析を行ったとしても、明確な答えが得られるとは限らないため、とりあえず既存市場にしがみついていというのが現実ではないだろうか。つまり、本質的に現在の市場と自社の経営資源がかみ合わないのであれば、市場に止まっている意味がないことになるが、既存の市場から撤退するのはかなり勇気がいることである。
 M&Aなども視野に入れて検討するのであれば、もっと選択肢を広げられるのであろうが、ここではそうした前提ではなく、拡大傾向にある既存市場に止まりながら、存立基盤を確保したいと願っている企業に限定して、高齢者活用の可能性を考えてみたい。
 ニッチ型かフォロワー型は別として、武器として有力なものはやはりローコストと技術力ではないだろうか。コストの削減については前述したので省略するが、技術力と高齢者の関係はないがしろされがちだが、市場規模の区切り方次第で強みに変換できる可能性が高いことはよく知られている。つまり、少数の拘り派を技術で引き寄せるのである。
 この場合でも、付加価値生産性という観点からはかなりマイナーに捉えられがちだが、人件費の節約と組み合わせることで、付加価値生産性はむしろ高まるのである。もちろん技術レベルによっても左右されるが、市場の主役がやがて高齢者になることも考慮すれば、小ロットの受注生産、コンサルティングセールスなどに活用できる。