製品・市場ともに成熟化しているが、経営資源は中程度であるといった場合?その1

 こうした状況下にある企業は、過去においての市場展開で、ある程度の成果を得たものの、新製品開発や新市場開拓などの抜本的な転換戦略を打ち出さず、日和見的に対応してきたものと思われるが、このまま推移すると経営資源は枯渇してしまう虞もあるため、限られた経営資源を集中して投下する製品・市場を見つけ出さなければならない。
 そうはいいものの、中小企業にとって多角化に踏み切るのは、既に市場展開している企業からは新規参入者として身構えられるであろうし、参入者同士の競争も激しいものになると予想しなければならないから、下手をすると企業の体力を消耗してしまう虞もあり、簡単には決断できないのが通常ケースである。
 自社にとって有望なマーケットであるかどうかは、保有している経営資源との対応関係をSWOT分析などにより、綿密に検討したうえでなければ判断できないが、情報収集力や加工力・分析力を担う人材が不足していれば、ターゲットを絞り込むことはできない。現在の状況はまさにそうした状態である可能性が高いともいえる。
 こうした岐路たった場合に企業が選択する方向は大きく三つある。一つは不十分な体制のまま進出先を決定し、半ば闇雲に突っ走るとい見切り発車型である。二つ目は、これとは正反対に、進出先を決めるのに小田原評定を繰り返すばかりで、結局一歩も踏み出すことができない。三つ目は、その中間の安全策を選択するケースである。
 どの選択が正しかったかは、運不運もたしかに手伝うので結果論でしかないかもしれないが、確立論的に言えば三つ目の選択が文字通り安全策となる。過去においては、見切り発車型で成功したケースも結構あったように記憶しているが、近代経営ではあまりにリスクが大きいので、最も敬遠しなければならない選択ではある。
 しかし、少なくとも中小企業に関する限り、こうした選択をしてしまい後戻りできなくなってしまったケースは、未だに後を絶たないというのが現実である。もちろん、いい加減な判断で踏み切ったという意識は全くないのであろうが、経営のセオリーからすると、あまりにも無謀であったと判断せざるを得ない場合が相当見受けられる。