現在の市場は魅力的であるが、経営資源は中程度であるといった場合

 現在の市場は魅力的で自社の経営資源を投入して、それなりの成果を得てきたという前提にたつと、今後同一市場で競争戦略を進める上ではやや不安があると見られるが、この場合でも人材力は戦略遂行の要であるから、高齢者も含めた従業員の教育・訓練は不可欠である。この場合の高齢者の位置づけはどのように考えるべきであろうか。
 市場が魅力的であるということは、新規参入も多発する可能性があると考えられるから、これらを迎え撃つための方策もまた必要になる。しかし、新規参入企業は何らかの強みを武器に経営革新を遂行するわけであるから、高齢者の経験がそのまま新規参入者への障壁として機能するとは考えにくいものと思われる。
 この場合を想定すると、企業は高齢者の経験よりも若年者の柔軟性を重視する方向にシフトしたとしても不思議ではない。こうした状況に置かれている企業は、一般的に言って高齢者の再雇用には消極的な場合が多く、高齢者雇用安定法に沿った取り組みも遅く、最小限度の義務をクリアできるのが精一杯のようである。
 こうした企業の考え方は常に防衛的で、率先してリスクをとるといった取り組みは殆どなく、場当たり的な対応に終始しているため、慢性的に経営革新に踏み切ることはできない状態にある。この連鎖を断ち切らなければ、業績の回復も難しいことは認識しているものの、対応に一歩遅れるため十分に経営資源を蓄積できない。
 従来型の考え方では、チャンスを待ち続けることで「海路の日和」を期待することも選択肢の一つとなりえたかもしれないが、景気循環型の変化は顕著に見られなくなっていることから、待ち続けることでは何も解決できない。こうした体質から脱却するためにも、厚い政策保護がある高齢者雇用を積極的に受け入れるべきである。
 好業績を続けている企業も、こうした時期を経て現在のポジションに辿りついたことを考えると、トライすることの意義は大きいが、十分にシミュレーションを繰り返し、納得のいく雇用制度を作り出さなければならない。高齢者を戦力化する姿勢で挑めば、組み合わせ次第でリスクを最大限に押さえ込める制度がみつかるはずである。