ハッピーな長寿社会ではどんなビジネスチャンスが期待できるのか

 2004年の家計調査{一世帯当たり1か月の支出(世帯主の年齢階層別):総務庁統計局)によると、60?69歳の消費出は、全体では255,965円で各年代層の平均(267,7795円)をやや下回っているが、個別の項目を見ると交通・通信や教育などが大きく平均を下回っている一方、保険医療だけは各年齢層に比べ高くなっている。
 また、国民生活基礎調査(厚生労働省)により「高齢者世帯の年間所得金額及び所得種類」をみると、2004年の年間所得は、299.9万円でそのうち稼働所得は17.6%、公的年金・恩給が71.9%となっており、稼働所得の割合が年々低下する傾向にある一方、公的年金・恩給の割合がこれに反比例する形で増加している。
 今度は貯蓄の側面から潜在購買力を推定するため、家計の金融資産に関する世論調査(金融広報中央委員会:2005年)により、貯蓄の目的をみてみると、60歳代は「病気や不時の災害への蓄え」76.4%、「老後の生活資金」79.0%、「旅行、レジャーの資金」14.5%、「特に目的はないが、貯蓄していれば安心」29.2%などが高い(複数回答)。
 以上の3つの統計資料からだけでも、60歳代の期待と不安、目指しているライフスタイルを垣間見ることができる。すなわち、年金に対する依存率が高まっていく中で、健康や老後のための蓄えを怠らない一方で、旅行やレジャーなどにも意欲を示している。この形は正に不安と期待が錯綜していることを物語っているように見える。
 2007年以降定年を迎える団塊の世代にとっては、現在60歳以上の世帯よりも一層深刻であることが窺われるが、仮に稼働所得が10ポイント上昇すれば、過去最高であった1998年の水準に戻すことができるので、就業の機会さえ確保される措置を講ずれば、消費性向は上向くものと推察される。企業の側から見れば顧客機能は確実に強化される。
 雇用の場を確保することで、高齢者の顧客機能を強化することと、従来のシステムに固執して若年者の社会負担率を引き上げるかの選択を迫られているということになる。現時点では、明確な根拠をもったシミュレーションがなされてはいないが、高い労働意欲を活用することが全体最適に繋がるものと思われる。