弱み強みはどの角度から見るかで変わってくる

 SWOT分析なる手法はよく用いられているが、これを現在自社が保有している経営資源をどの分野に投入すべきか、という場面でよく問題を解決手段として登場する。私も結構活用している一人ではあるが今一つピンと来ない面があり、説得力にかける思いをしているが、これは手法の欠陥ではなく活用者の未熟さのせいなのかもしれない。
 しかし、この手法によれば、後継者の存在などは当然強みとカウントすべきであろうが、社長の息子が次期社長という世襲めいた後継者選びが、本当に会社の将来にとってプラスになるのだろうかと考えさせられることも多い。もちろん、現在の経営者の理念を引き継ぐことを前提にすれば、これ以上の後継者はいないのかもしれない。
 たしかに、これは何にもまして強みだと直感する場合もあるので、世襲を批判する積もりはないが、現在の状態でも社長の交代が望まれるのに、またぞろ息子を次期社長にという構図には辟易してしまう。これは極端な例かも知れないが、このようなボタンの掛け違いからスタートした分析ではあまり意味がないのでないだろうか。
 更に最悪なケースは、自分の息子を紹介しながら、「私の後継者としてどうでしょうか」などと問いかけられたときなど、言葉に詰まってしまいコメントできないことがある。この場合、意見を求めているのではなく、既に決定していることに対して同意を求めているに過ぎないから、本音で苦言を呈する余地など全くないわけである。
 後継者選びの話が主題ではない。高齢社会の到来に企業がどのように対処すべきか、という問題解決手段を探索するに当たって、経営資源の強み・弱みと市場の機会・脅威を対応させて、限られた経営資源を効果的に投入する分野を検討することであった。この場合、現在と将来を見据えて分析することが求められる。
 したがって、目まぐるしく変化する市場をどのように捉えるかという分析が、まず先行して行われなければ、何に対しての強みか弱みかが不明なため、問題の解決には結びつかないものとなってしまう。つまり、市場の真っただ中にあるニーズを高齢社会の中から探し当てるという視点がなければ、市場の入り口は見つからないのではなかろうか。