鍵を握る団塊の世代のライフスタイル

 2000年3月に高齢・障害者雇用支援機構が実施した、「団塊の世代の仕事と生活に関する意識調査」によれば、定年後も働きたい人は38.0%、働きたくないが働かざるを得ない人が28.6%で合計66.6%が働くと答えているが、決めかねている人15.6%、働かない人10.4%、考えていない人5.7%、その他1.7%という結果になっている。
 また、定年後はたらきたい年齢を尋ねたところ、現在の定年年齢が高いほど就労希望年齢は高く、定年制がない企業に勤めている人の場合、何歳になっても働きたい人が44.1%、70歳くらいまでが19.7%、68歳くらいまでが6.4%、65歳くらいまで26.6%で、63歳くらいまでは0.5%となっており、60歳定年制に比べて圧倒的に就労希望年齢が高い。
 このことは、企業側が多用なメニューを開発し、高齢者の就労機会を提供できれば、労働力人口を引き上げることは可能であると解釈できる。ということは、高齢者が一定の付加価値生産性水準を保ちながら、就労できる職場を開発すれば足りるということになるので、工夫次第では可能性が高いものと思われる。
 この生みの苦しみをコストとすることで、安定した社会システムを確立できるとすれば、付加価値は比較にならないくらい大きいものになるとこは確実である。つまり、若年労働者に支払う給与のうち年金負担分を軽減できるし、高齢者に給与を支払うことで、企業が市場に提供する商品に対する購買力が増大する。
 おまけに、安定した定期収入が見込めることで、財布の紐もゆるくなる資産効果も働き、一大シルバーマーケットを形成する。多用なライフスタイルを楽しむ団塊の世代は、新製品開発のチャンスを与えることにもなるだろうから、高齢従業員は、自分のニーズにフィットした製品を自分自身で開発する喜びも生まれる。
 高齢者雇用に積極的に取り組むことは、ある意味で顧客機能を充実させることでもある。すなわち、高齢者を雇用して給与を支払うということは、その所得が購買力を充実させると意味で、顧客の機能が充実することになるわけである。こうした循環型の仕組みをつくることこそ、本物の関係づくりマーケティングの典型ではないだろうか。