総合予算編成

本シリーズでは、企業が環境変化に対応して経営革新を志向し、経営戦略を再構築する場合の中長期計画策定プロセスを辿りながら、利益計画を中核に据えて、「目標利益の設定」、「販売計画」、「固定費計画」、「変動費計画」、「設備投資計画」、「資金計画」を取り上げてきたが、これを短期利益計画に落とし込むプロセスを最後に見てみたい。
 短期利益計画は、上記の利益計画の単年度予算として位置づけられ、販売予測と短期資金計画がメインに据えられる。この両者の整合性を予算編成方針という形に整理して、本部予算、部門予算へとブレークダウンしていくが、この予算は更に損益予算と資金予算に分けられ、前者は売上高予算、原価予算、仕入高予算、営業費予算に組まれる。
 後者は、現金収支予算、信用予算、資本支出予算に編成され、総合損益予算となり最終的に見積損益計算書と見積貸借対照表に統合される。この総合予算は、経営管理システム(内部統制システム)や原価管理システムによって統制されが、このときの事前統制システムが、計画と実績の差異分析で是正措置までもその範疇に含まれる。
 なお、当然のことながら、必要に応じて製品開発プロジェクトもが編成されることもあるし、設備投資を伴う場合は、現在価値法などによる経済計算が行われる。このような大きな流れに沿って、企業の経営戦略は実施に移され、経営目標の達成を目指すことになるのだが、一旦各部門に下ろされると、全社的な目標が見失われがちになる。
 一見相反するように見える部門目標達成と全社目標を常に整合させるようにコントロールする機能が、他ならぬ内部統制システムである。この機能の充実は以前から話題にはなっていたものの、表面的な収益に繋がるという認識が希薄であったためか、新会社法の施行までは優先順位が必ずしも高くはなかった。
 しかし、CSR(企業の社会的責任)の遂行という立場ばかりからだけではなく、環境変化に鈍感であったことが経営危機を招いてしまうなど、内部統制システムが作動していれば防止できたであろうと考えられる事件が多発している。中小企業の運転資金不足もネッコは同じで、このシステムの甘さにあったことを深く反省しなければならない。