資金計画?その4

前述のように、資金繰り悪化の最大の原因は売上の減少である。したがって、この兆候が生じた時点で抜本的な対策を立てなければ、緊急避難の連鎖に陥ってしまうことになる理屈である。とはいうものの、売上の減少の原因はさまざまであるから、自社の経営努力のみで対処しきれない場合も多いかもしれない。
 本稿のメインテーマは利益計画であるから、資金計画についても売上が主役として登場しても不思議ではないが、このことに関しては販売計画で述べているので、ここでは運転資金計画に絞り込んで話を進めたい。運転資金といえば流動比率を無視して語ることはできないので、この意味を少し掘り下げて考えてみよう。
 流動比率は、流動資産÷流動負債×100で表されることから、一見して認識できるように流動資産が流動負債の何倍あるかということを表している。通常この比率は120?150%程度必要といわれているのは、今支払う必要のある債務に対して現在保有している資金が1.2?1.5倍は用意しておく必要があるということだ。
 したがって、企業は最低でも100%以上は常に確保しておく必要があるわけであるから、資金繰りを潤沢にするには、まずこの比率を大きくすることが第一の課題である。そのためには2つのアプローチがあるが、まず流動資産を大きくすることを考えると、現金・預金、売掛金、受取手形、棚卸資産などを増加させることなどが思い浮かぶ。
 もう一方のアプローチは、流動負債である買掛金、支払手形、未払い金、短期借入金などを縮小することである。しかし、これらの流動資産および流動負債は対応関係にあるため、一方の増減は他方の増減となってしまうため、流動比率を向上させるための抜本的な対策にはなりえないことは一目瞭然である。
 しかし、入金(資金化)と支払時期に多少の時間差があれば、一時的に流用できる可能性があるため、思わず利用してしまうことになるのだがそのツケはすぐに回ってくる。ただし、現在の流動比率が100%以上であれば、両者(流動資産と流動負債)を相殺する形で減少させれば流動比率は向上する。ここが意思決定の正念場なのである。