資金計画?その2

ここでは企業にとっての健全な財務構造とはどんなものかについて考えてみたい。ごく一般的な評価基準でいえば、設備資産は自己資本ないし長期資金で賄われており、かつ正味運転資本が潤沢であることであろうが、財務構造が健全であるかどうかの判断は、投下された資産の運用によってもたらされたリターンとの関係も評価の対象となる。
 例えば、自己資本率が高く固定資産、流動資産ともにかなりの程度自己資金でカバーされていたとしても、その資産の運用力が劣悪でリターンが少ない場合、運用力に問題があるのか、もともと投下資本が過剰なのかは直ちに判断がつかないこともあるなど、財務構造は時間の経過とともに評価が変化するからである。
 運用力に重点に置いた評価からすると、市場戦略の巧拙を問題にするであろうし、市場展開を所与の条件として評価すれば、資本の運用効率を軸として再投資による運用を問題にするかもしれない。つまり、健全な財務構造かどうかの判断基準は極めて恣意的なものであり、企業が何を目論んでいるかを基準して企業自身が評価するべきものである。
 更にいうならば、資本の運用効率自体の評価も極めて怪しいといわざるを得ない。例えば、一般的な設備投資とファイナンスリースによる設備とを比較してみると、前者の場合は、総資本の回転率は当然低くなるが、減価償却費や償却資産税などが費用として発生する。後者は資産には計上されないので、総資本の回転率は高くなる。
 その結果、減価償却費+支払利息+償却資産税と年間リース料が同額以下であれば、営業利益率が高くなる分、総資本対営業利益率は高くなることになるから、資本構成がスリムな後者の方が利益率も高いので財務構造もより望ましいという見方もできることになり、調達手段の相違を超えた不合理が顕在化している。
 こうした考え方が法改正の趣旨であったかどうかは別として、ファイナンスリースという商品のコンセプトに照らし合わせても、資産としての性格を重視するのは当然のことである。ともあれ、財務構造の健全性は、資産を運用する人材力を抜きにしては語れないので、形式的な比較は無意味であるが、人材力もまた資産に計上できない。