合理的な設備投資計画

利益計画では設備投資については触れないのが常識なのかもしれないが、新製品の開発や設備の更新なども利益計画に織り込まざるを得ない場合も想定されるし、また、経営計画の中の利益計画と捉えれば、設備投資も関連分野として位置づけておくことはそれなりに意義があることであると思われる。
 多くの中小企業が置かれている現状を見ると、設備投資の功罪が現在の経営を左右している面が明らかであり、これが利益を圧迫している元凶と感じている経営者も多く存在することを思うと、設備投資計画が利益計画に大きな影響を与えることは確かである以上、短期の利益計画にも組み込む方が合理的である。
 中小製造業の場合特にそうであるが、設備資産の稼働率が低いため総資本対営業利益率が低く、経営資本を無駄にしているケースはかなりあり、この資金調達が借入金に依存している場合は、償還原資が捻出できず利益計画の策定に苦慮している。こうなるとM&Aを視野に入れた意思決定を迫られることになってしまう。
 設備投資の経済効果は長期にわたって流入する年度ごとのキャッシュフローを、資本コストで割り引いた合計と現在の投資額を比較して測定されるが、キャッシュフローはあくまでも期待額であり、競争条件や技術革新の進展次第では不安定になることも当然予想しておくべきであるが、現実には十分なシミュレーションは行われていないようである。
 設備投資計画を利益計画の中に組み込む場合、先に紹介した費用の相関分析に加えて、投下資本の効率や流動比率、受取勘定回転率など資金の調達と運用についても別立てで分析する必要がある。つまり、効率と効果の両面からシミュレーションを繰り返すことで、利益計画の目標水準が明らかになるのである。
 こうした手続きを怠り、資金調達力にものをいわせて投資計画を断行したことが、キャッシュフロー不足を顕在化させた面は否めないような気がする。今日の「勝ち組」「負け組み」が生じたのは単なる結果ではなく、経営革新に取り組む時点での意思決定により、明暗を分ける潜在的因果関係が潜んでいたものと推察される。