費用の分解方法とその意義

これまでの論述では、費用の分解についてはあまり触れなかったが、決してこれを無意味だなどと軽視しているわけではない。損益分岐点分析は費用計画を策定する場合の基本的な分析手法であることは間違いないので、ここではその手法の基となる費用の分解についてスポットをあててみることにする。
 変動費とは生産量や販売量に比例して変動する費用のことであり、原材料費や仕入原価、直接労務費、支払運賃、販売手数料などがその例であるから、生産や売上がゼロであれば変動費もゼロであるという性質を持っているので、原則として操業度に比例して直線的に変化する管理可能費用として位置づけられる。
 当然のことながら、固定費は操業度とは殆ど無関係に発生する費用である。ここで少し厄介なのは、準変動費と呼ばれるもので、生産量や売上高と連動した変動するが、必ずしも比例的に変化しない費用がある。例えば、操業度の上昇にしたがって一定の範囲までは固定しているが、範囲を超えると飛躍的に上昇する費用などである。
 そのほかには、操業度上昇に対して2次曲線を描いて上昇する費用(逓増費)やこれとは逆にゆるい放物線を描いて変化する逓減費などがある。これらの費用は損益分岐点分析を行う場合はもちろん、変動費計画や固定費計画を策定するに際しても、費用を分解して変動費と固定費に分けなければならないことになる。
 この方法は一般によく行われているのは、以下の3つである。?帳簿上で各費用を個別に固定費と変動費に分類する方法である。?休止コスト法と呼ばれる方法で、生産活動や販売活動を一時的に停止した場合に残る費用を固定費とする。?スキャタグラフ法(散布図法)により操業度との相関の強さを視覚によって分別する方法である。
 その他にも、最小二乗法がよく使われるが、これはスキャタグラフ法を数学的に処理したものであるが、現代ではパソコンが普及しているので、エクセルなどのグラフ機能を活用して近似値を求める方法で十分対応できる。より厳密に分解する必要があるのであれば、相関分析ないし重回帰分析を用いることをお勧めする。