企業経営を維持発展させるために必要な費用である総費用は、一定の操業度内で定期的に支出される固定費と操業度に比例して支出される変動費に区分して、費用管理の対象としている。前者は更に減価償却費や賃借料、租税公課などのように一旦投資されると統制が困難になるキャパシティコストとある程度統制可能なマネジリアルコストがある。
操業度が創業時に想定した水準を慢性的に下回るようなことになれば、設備の売却や廃棄、賃借物件の返還なども検討されることになるので、その場合は、キャパシティコストの削減がメインの課題となっている以上、通信費や人件費といったマネジリアルコストは、固定費削減の対象となるのは当然のこととも言える。
どちらのコストを最優先して削減するかは、企業の置かれている状況によって異なるであろうが、安易に人件費の削減に着手した場合、経営者の思惑通りに営業利益が増加するするとは限らないが、その分総付加価値は確実に減少することになるので、付加価値生産性も低下し、労働分配率は上昇することにもなり兼ねない。
急激な市場の縮小や消費行動の変化に対応するため、半ば緊急避難的に採用した意思決定である場合はやむを得ないとしても、理論的な根拠なしに目先の固定費の削減に走った場合、どうしてもこのような矛盾した結果になりがちなので、費用の削減が売上と利益にどのように影響するかを十分考慮したうえで意思決定をしなければならない。
上記のような意思決定を行う場合は、全社的なコンセンサスを得たうえあくまでも緊急避難的に行うことを宣言しなければ、悪循環に陥ってしまい防戦一方の対応に終始することなる。つまり、企業にとって最大の働き手である従業員の心を冷やしてしまうため、期待した収益や利益が獲得できなくなり、悪循環はますます加速されてしまうことになる。
このように考えると、固定費計画は収益と費用の問題というよりは、製造や販売に直結するいわゆる費用収益対応の原則を超えた、企業の長期ビジョンに関わる問題と捉えるべきではないだろうか。つまり、固定費といえば人件費という先入観から抜け出し、経営資源の再配分の問題と位置づける姿勢で挑まなければならない。
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